建設業界の安全を守る統括安全衛生責任者とは?職務や選任について解説

建設業界の安全を守る統括安全衛生責任者とは?職務や選任について解説

建設業界における安全管理は、現場の作業員や周辺環境の安全を確保するために非常に重要であり、その中でも、統括安全衛生責任者は、現場の安全管理体制の中核を担います

この記事では、統括安全衛生責任者の役割や職務、ほかの安全衛生管理者との違いを紹介します。

目次

統括安全衛生責任者とは?

まず、統括安全衛生責任者とはどんな存在なのか、その概要を解説します。

統括安全衛生責任者の定義と法的な背景

統括安全衛生責任者は、建設業界における安全管理の最高責任者として、現場全体の安全衛生対策を統括・管理する役割を担っています。建設業、造船業の2業種で選任され現場の安全対策を徹底し、労働災害を未然に防ぐための施策を実行します。一定規模以上の現場では日々複数の作業が同時に行われるため、統括安全衛生責任者の存在は欠かせません。

統括安全衛生責任者は、労働安全衛生法に基づき、法的な義務として企業に選任が求められている役職です。適切な資格や経験を有する人物を、特定元方事業者が責任を持って選任する必要があります。

統括安全衛生責任者の職務・役割

統括安全衛生責任者の主な職務は、その名の通り、現場全体の安全衛生管理を統括することです。統括・管理する事項は以下の6つです。

①協議組織の設置及び運営
安全衛生に関する問題を協議するための組織を設置し運営
②作業間の連絡及び調整
異なる作業や作業者間での連絡と調整を行い、作業の円滑な進行と安全確保を図る
③作業場所の巡視
定期的に作業場所を巡視し、危険箇所の特定や安全対策の実施状況を確認
④関係請負人が行う労働者の安全衛生教育に対する指導及び援助
労働者が適切な安全衛生知識を身につけ、安全に作業を行うことを促進するための指導と支援
⑤仕事の工程に関する計画、作業場所における機械、設備等の配置計画を作成及び当該機械、設備等を使用する作業に関し関係請負人が安衛法又はこれに基づく命令の規定に基づき講ずべき措置についての指導
機械や設備を安全に配置して使いやすくし、作業の順序やタイミングを決め、安全で円滑に進められるように、法律に基づいた安全対策を関係者に指導
⑥その他労働災害を防止するために必要な事項
労働災害を防止するために、リスクアセスメントなどの特定の対策に限らない包括的な安全対策を講じる

参照:厚生労働省|職場のあんぜんサイト

統括安全衛生責任者は、現場のリスクアセスメントを行い、潜在的な危険を特定して対策を講じます。また、安全衛生計画を策定し、作業員に対する安全教育や訓練を実施します。定期的な安全パトロールを行い、安全基準の遵守状況を確認することも重要な役割です。さらに、事故や災害が発生した際には迅速な対応と原因究明を行い、再発防止策を講じます。

これらの業務を通じて現場の安全を守り、作業員の健康と安全を確保する重要な役割を果たしています。

統括安全衛生責任者とその他安全衛生管理者との違い

「安全衛生」と名前が付く存在はほかにもいくつかあります。ここでは、統括安全衛生責任者とその他の各安全衛生管理者の違いを解説します。

元方安全衛生管理者

元方(もとかた)安全衛生管理者は、現場を統括する統括安全衛生責任者が行う業務の中で、技術的・具体的な業務を管理する責任者です。統括安全衛生責任者の業務を補佐する役割を果たします。

元方安全衛生管理者と統括安全衛生責任者は、設置場所と役割に違いがあります。元方安全衛生管理者は主に建設現場や製造業の事業所に設置され、元請け業者として全体の安全衛生管理を行い、下請け業者を監督する役割です。一方、統括安全衛生責任者は、造船など一定規模以上の事業場に設置され、全体の安全衛生管理を統括します。

店社安全衛生管理者

店社(てんしゃ)安全衛生管理者は、中小規模の建設現場で労働災害が発生しないよう、現場代理人などの指導を行う責任者です。統括安全衛生責任者や元方安全衛生管理者、安全衛生責任者の選任が義務付けられていない現場では安全管理体制が整っていないことが多いため、店社安全衛生管理者を選任し、現場内の特定区域や作業の安全を確保します。

統括安全衛生責任者は企業全体や大規模な事業場において安全衛生管理を統括し、全体的な方針と計画を策定・実施しますが、店社安全衛生管理者は店舗や事業所単位で安全衛生管理を担当し、具体的な安全対策を実施する役割を持ちます。

統括安全衛生管理者

括安全衛生管理者は、一定規模以上の現場全体の安全衛生を管理する最高責任者です。労働安全衛生法に基づき設置され、現場全体の安全を総合的に管理します。

統括安全衛生責任者は建設業と造船業で選任されますが、統括安全衛生管理者が選任される現場は工業、林業、小売業など多岐にわたります。各現場で安全衛生計画の策定と実施、全体的なリスクアセスメントの実施、そして全作業員に対する安全教育などの役割を担います。

統括安全衛生管理者と統括安全衛生責任者はいずれも、現場で働く人の労働災害が起こらないよう管理する役割を果たしています。

総括安全衛生管理者

括安全衛生管理者は、労働安全衛生法により一定の規模の現場ごとに選任が義務付けられている、建設業および造船業以外の職場や労働者の安全衛生の統括管理を行う管理者です。

統括安全衛生責任者は建築業と造船業で選任され、現場で複数の事業者がいる際に労働災害が起こらないように管理する役割を果たしていますが、総括安全衛生管理者は、林業や鉱業、製造業など幅広い業種で労働者の安全を守り健康被害を防止する安全衛生の統括管理を行います。

統括安全衛生責任者の選任について

統括安全衛生責任者はどのようにして選ばれるのでしょうか。選任の方法や必要な資格について解説します。

選任の要件

統括安全衛生責任者の選任要件は、工事の種類や規模によって異なります。たとえば、鉄骨造り、鉄骨鉄筋コンクリート造りのオフィスビル建設や造船などの大規模な工事で常時50人以上の労働者がいる場合には選任が必要です。また、ずい道(トンネル)や橋梁建設のような工事では、工区ごとに30人以上の労働者がいる場合に選任されます。

なお、労働者数が統括安全衛生責任者の選任要件に満たない現場でも安全衛生管理のため、管理者を選任することとされています。統括安全衛生責任者の選任基準は労働安全衛生法により工事の種類に応じて定められていため、労働者の安全と健康を守るために適切な管理体制の構築が肝要です。

選任された統括安全衛生責任者は、法令で定められた研修を受け、専門的な知識と経験のもと、現場の安全管理を徹底することが求められます。

誰が選任するのか

統括安全衛生責任者の選任は企業の安全管理体制の中で非常に重要なプロセスであり、適切な人物を選ぶことが重要です。

事業主や元請け企業の代表者が責任を持って行うことが法律で義務付けられており、企業の安全管理体制を強化し労働災害の防止を図るための重要な手続きです。

選任にあたっては、選任者が適切な素養や経験を有するかどうかを慎重に判断します。選任された統括安全衛生責任者は、企業全体の安全衛生管理を統括し、現場での安全確保に努める役割を果たします。

資格は必要か

統括安全衛生責任者として業務するために資格・免許は必要ありませんが、労働安全衛生法で定められた安全衛生に関する研修を修了することが必須となります。この研修では、安全衛生管理の基本から最新の法令や規則まで、幅広い知識の習得が求められます。

また、統括安全衛生責任者になるためには実務経験も重要な要素で、現場の具体的な状況を理解し適切な対策を講じる能力が求められるためです。

選任についての報告義務

選任された統括安全衛生責任者の情報は、労働安全衛生法に基づき、所轄の労働基準監督署に報告する義務があります。報告する情報は、選任者の氏名や選任日、所属する企業の情報などです。

代理の選任

統括安全衛生責任者が不在の場合や一時的に業務を遂行できない場合には、速やかに代理を選任します。この代理の選任も企業の代表者が責任を持って行います。選任されるのは、ここまで解説してきた統括安全衛生責任者としての要件を満たす人物でなければなりません。

代理を選任した場合も、労働基準監督署への報告が必要です。法的な義務を果たすことで、安全衛生管理体制の連続性を確保します。

まとめ

統括安全衛生責任者は、リスクアセスメントの実施、安全衛生計画の策定と実施、作業員への安全教育、定期的な安全パトロールなどが主な業務であり、適切な素養と経験を持つ人物が選任されます。適切な選任と管理体制の構築を行うことで、労働災害を未然に防ぎ、安全な作業環境の維持につなげます。

建設現場で働く人々の安心・安全を守り、私たちの生活に欠かせない建物やインフラを作り上げるために、統括安全衛生責任者はなくてはならない存在です。


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